2017年06月06日
オープンソース活用研究所 所長 寺田雄一
2017年3月、都内でTIS株式会社とレッドハット株式会社による共催セミナー「Ansibleを活用しインフラ構築を自動化(Infrastructure as Code)した、プロジェクト工期短縮事例 ~インフラエンジニアの働き方をSHIFTする~」が開催されました。
レッドハット社が提供するAnsibleは、既存ツールの弱点を克服し、IaC (Infrastructure as Code:インフラのコード化)を具現化するための自動化実行エンジンです。自動化プラットフォームである「Ansible Tower」とともに、システムの運用自動化を目指す企業のIT担当者、システムインテグレーターから注目を浴びています。
このセミナーでは、Ansible及びAnsible Towerの概要紹介をはじめ、TIS社によるAnsible導入事例とベストプラクティス、さらにはインフラエンジニアのみならずIT業界全体の働き方改革についての提言もなされました。本レポートでは、このセミナーの概要を3回にわけてご紹介します。
第3回目のテーマは、TIS株式会社 IT基盤技術推進部 OSS推進室 倉持健史氏によるセッション『インフラエンジニアの働き方を「SHIFT」する~撲滅!長時間労働~』です。
これまで見てきた、IaCの取り組みは、品質・生産性を上げるための考え方です。視野を広げれば、この概念は、近年国内でも関心が高まっている働き方改革にもリンクすると言えるでしょう。
第二次安倍内閣が掲げる成長戦略である「日本再興戦略2016 総論」にも、「長時間労働の是正と『働き方改革』が経済成長に大きな効力をもたらす」と明示されています。働き方改革は、政府も本腰を入れて取り組んでいるテーマなのです。
働き方改革が求められる背景とはどのようなものでしょうか。
現在のIT業界は、月80時間残業をする社員が全体の半数近くもいる、「長時間労働が当たり前」という業界です。
2015 年度にIT企業を含む情報通信業の従業員が東京都内で労災認定された数は20名でした。特にIT業界は、従業員数当たりの比率が精神疾患、自殺ともに他産業の2倍以上となっており、さらに精神疾患の割合はワースト1です。これは過酷な長時間労働が原因のひとつだと考えられます。
また、エンジニア情報サイト「fabcross for エンジニア」が2017年1月に実施した「1万人に聞いた残業する理由」というアンケートでは、回答の第1位は「残業代がほしいから」というものでした。いわゆる生活残業とも言われるものです。続いて第2位は「担当業務でより多くの成果を出したいから」でした。
時間をかければそれなりのアウトプットになるのは自明です。しかし、生産性という観点からみると、時間を長くかけることは必ずしも良策とは言えないというのが、倉持氏の視点です。
日本の労働生産性は世界22位というデータがあり、先進国で最下位です。つまり労働時間は最高クラスであるにもかかわらず、生産性は最低クラスということです。
かつての高度経済成長期であれば、マンパワーでうまく経済が回っていきました。しかし、少子高齢化で労働者が減少し社会保障費などの負担が増す現代では、より生産性を上げることが求められる時代に変わりました。
2017年現在、求められているのは、決められた時間で成果を挙げる働き方改革なのです。
働き方改革の第一歩として、働く時間を考えてみましょう。
勤務時間は、労働基準法に定められている一日8時間、週に40時間が基準となります。まずは、この限られた時間の中で成果を出す、いう意識改革が必要です。
次に生産性について上記の例で考えてみます。A氏とB氏を比較すると、売り上げだけに着目すればA氏の方が高いのですが、実は1日4時間の残業をしています。
ですから時間当たりの生産性を単純計算すると、残業をしていないB氏の方が、生産性が高いことがわかります。
さらに1日4時間というA氏の時間外労働は、1か月に換算すると80時間にもなります。これは働きすぎにより健康障害を生じる可能性が極めて高い過労死ラインに抵触します。現在のIT業界は、80時間を超える残業を行う社員の割合が44%も存在します。この数値は全産業中でトップであることは、極めて由々しき問題だといえるでしょう。
働き方改革とは、要するに「A氏の働き方からB氏の働き方にシフトしましょう」というものです。
そのためには、社員ひとりひとりの意識改革だけでは充分ではありません。たとえば、経営層の評価基準についても残業時間の長短ではなく、生産性を評価の対象にするような改革が求められています。このような人事評価制度の見直しに加え、政府による法的規制など包括的に進めていく必要があります。
この働き方改革を推進するためにIT業界ができること、そのひとつの提案が、インフラのコード化・自動化です。
時間外労働を減らし生産性を上げるには、誰でも同じ成果を出せる仕組みが必要で、そのひとつがインフラのコード化・自動化だということです。
時間外労働に割いていた時間をプライベートに割り当てることで、いわゆるワークライフバランスがとれて、その結果としてより生産性が上がることが期待できます。
他業種とくらべても圧倒的に時間外労働が多いIT業界においては、生産性を向上させるという意識改革が求められています。これは従業員のみならず、経営者や政府とともに取り組んでいく大命題です。
IT業界のなかでも働き方改革を推し進める動きが始まっており、そのひとつがインフラのコード化・自動化であり、もうひとつがオープンソースをフルに活用したインフラ構築です。
IT業界に携わるひとりひとりのワークライフバランスがとれたとき、結果として生産性の向上が達成できるのではないでしょうか。
いかがでしたでしょうか。
Ansible紹介ページ
本セミナーの講演資料は、マジセミからダウンロードできます(無料)。
第一回目「注目の運用自動化ツールAnsibleとAnsible Towerとは」
第二回目「Ansibleの使い方と、そのベストプラクティス」
1993年、株式会社野村総合研究所(NRI)入社。 インフラ系エンジニア、ITアーキテクトとして、証券会社基幹系システム、証券オンライントレードシステム、損保代理店システム、大手流通業基幹系システムなど、大規模システムのアーキテクチャ設計、基盤構築に従事。 2003年、NRI社内に、オープンソースの専門組織の設立を企画、10月に日本初となるオープンソース・ソリューションセンター設立。 2006年、社内ベンチャー制度にて、オープンソース・ワンストップサービス「OpenStandia(オープンスタンディア)」事業を開始。オープンソースを活用した、企業情報ポータル、情報分析、シングルサインオン、統合ID管理、ドキュメント管理、統合業務システム(ERP)などの事業を次々と展開。 オープンソースビジネス推進協議会(OBCI),OpenAMコンソーシアムなどの業界団体も設立。同会の理事、会長や、NPO法人日本ADempiereの理事などを歴任。 2013年、NRIを退社し、株式会社オープンソース活用研究所を設立。
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Alertmanager(アラートマネージャー)とは、オープンソース監視ソリューション「Prometheus」に付随するアラート管理ソリューションです。Prometheusサーバや他サーバからさまざまな種類のアラートを受信して処理できます。「クラスタ構成による高可用性」も実現できます。
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Bacula(バキュラ)とは、オープンソースのバックアップ&リカバリソリューションです。複数OSが混在する異種ネットワークでのバックアップも可能であるため、エンタープライズレベルの統合的バックアップシステムを構築できます。「高度なストレージ管理機能」や「紛失/破損ファイルの検索および回復機能」などの機能を備えています。
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collectdとは、システム情報を定期的に収集する小さなデーモンであり、さまざまなシステム値を保存および監視するメカニズムを提供します。数十万のメトリックを処理するための最適化と機能を利用して、システム(アプリケーション)のパフォーマンスメトリックを定期的に収集し、RRDファイルなどのさまざまな方法で値を格納します。
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Polaris(ポラリス)とは、Kubernetesデプロイについて検証および実施するためのオープンソースツールです。クラスタ構成に対してさまざまなチェックを実行して、Kubernetesポッドとコントローラーがベストプラクティスを使用して構成されていることを確認し、将来の問題を回避するために役立ちます。
Chef(シェフ)とは構成管理(プロビジョニング)ツールです。インフラ環境構築を簡単に行うための各種機能が搭載されており、「ユーザー作成」「パッケージインストール」「設定ファイル編集」「システム各種設定」などの展開作業を自動化できます。「物理環境」「仮想環境」「クラウド環境」などの各種インフラ環境をサポートしています。
Spinnaker(スピネーカー)とは、マルチクラウド継続的デリバリープラットフォームです。複数クラウドに対するデプロイやクラスタ管理を実施し、アプリケーションリリースについて高速かつ確実にリリースするためのインテリジェントな継続的デリバリープロセスを自動化できます。
SEC(Simple Event Correlator)とは、高度なイベント処理のためのイベント相関ツールです。「イベントログ監視」「ネットワーク監視」「セキュリティ監視」「不正検出」「イベント相関を含むその他のタスク」などに利用できます。単一プロセスとして実行され、プラットフォームに依存しない軽量ツールとして利用できます。
Embulk(エンバルク)とは、プラグ可能なマルチソースバルクデータローダーです。バルク処理に特化したプラグインベースのデータローダーで、大規模データセットのバルク転送を実施します。「データベース」「DWH」「NoSQL」「ファイル形式」「クラウドデータストア」などのデータ転送を強力にサポートします。
Apache ZooKeeper(アパッチズーキーパー)とは、分散環境運用サポートサービスを提供するコーディネーションエンジンです。各ノード(システム全体)を集中保守管理するための機能を提供します。「設定管理」「名前解決」「同期」「グループサービス」などの利用頻度の高いさまざまなサービスが用意されています。
Graphite(グラファイト)とは、高度にスケーラブルなエンタープライズ対応監視ツールで、リアルタイムグラフを作成できます。「Webサイト」「アプリケーション」「ビジネスサービス」「ネットワークサーバ」などのパフォーマンスを追跡し、時系列データの「保存」「取得」「共有」「視覚化」が可能です。
Zabbix(ザビックス)とは、オープンソースの統合監視ツールです。統合監視ツールとして必要な機能を網羅的に搭載しており、「サーバ」「ネットワーク」「アプリケーション」などを高度に集中監視し、「障害検知」「アラート通知」「パフォーマンス可視化」などを行えます。システム全体を1つのZabbixで監視できます。
Puppet(パペット)とは、オープンソースの構成管理ツールです。「パッケージインストール」「サーバ構成更新」「ユーザー追加」などインフラストラクチャの管理を自動化するツールを提供します。「Linux」「UNIX」「Windows」をサポートし、システムの自動管理エンジンとして一元化された仕様に基づいて管理タスクを実行します。
NUT(ナット)とは、電源デバイスを監視するために設計されたソフトウェアコンポーネントスイートです。「無停電電源装置」「配電ユニット」「ソーラーコントローラー」「サーバ電源ユニット」などの多くのブランドとモデルをサポートし、ネットワークプロトコルと標準化されたインターフェースを介して管理できます。
Graylog(グレイログ)とは、オープンソースのログ管理プラットフォームです。オープンスタンダードに基づいてさまざまなデータソースからデータを収集し、1つの中央ロケーションからデータ管理を行えます。セキュリティとコンプライアンスに関するニーズに対応できる包括的なログ管理ソリューションを構築できます。
Nagios(ナギオス)は統合監視フレームワークです。「サーバ」「ネットワーク」「リソース」「サービス」などの稼働状況を監視し異常時に通知を行います。Nagios本体は主に「プラグインのスケジューリング」「チェック結果保存」「チェック結果通知」「Webインターフェース提供」などを行い、実際の監視は各プラグインが実施する構造になっています。
Prometheus(プロメテウス)とは、システム監視および警告ツールキットです。柔軟なクエリとリアルタイムアラートを備えたHTTPプルモデルを使用して構築された時系列データベースにリアルタイムメトリックを記録します。時系列データに基づいたアクティブな「スクレイピング」「保存」「クエリ」「グラフ化」「アラート」を含む完全な監視および傾向分析機能を提供します。
Ansible(アンシブル)とは構成管理ツールです。多数の構築管理対象に対するアプリケーションとシステムの導入を容易にするシンプルなIT環境構築自動化プラットフォームです。「設定ファイルがシンプル」「使いやすい」「管理対象サーバへのエージェントソフトウェアインストール不要」など、最小限の手間で各種設定を自動化できる特徴があります。
Fluentd(フルエントディー)とは、データコレクタ(ログデータ収集管理ツール)として、ログデータを収集しJSONに変換して出力する機能を提供します。「入力機能」や「出力機能」などはモジュール化されており、プラグインモジュールを追加することで、さまざまなデータソースや出力先に対応できます。
Grafana(グラファナ)とは、オープンソースのデータ時系列分析用ダッシュボードツールです。インフラやアプリケーションなどのさまざまなデータソースにアクセスして各種メトリクス情報を収集し、時系列データとして可視化できます。リッチなグラフ描画によって一目見ただけでリアルタイムにステータスを把握できます。
OTRS(オーティーアールエス)とは、「ヘルプデスク機能」+「ITIL対応運用管理機能」を備えるオープンソースの高機能チケット管理ソリューションです。会社や団体や組織などが「顧客から受け取った個々の問い合わせやクレーム」や「それに関連する対応履歴や各種事象など」を「チケット」と呼ばれる単位でまとめて効率的に管理できます。
Logstash(ログスタッシュ)とは、Elastic社が提供するログ収集管理ツールです。サーバサイドデータ処理パイプラインとして、さまざまなデータソースからログを収集し、1つのサーバに集約する機能を提供します。多様なプラグインを使用して、どのようなタイプのイベント(ログ)にも対応できます。
Kubernetes(クーベルネイテス)とは、クラウドネイティブコンピューティング基盤のためのDockerコンテナ群管理フレームワークです。Dockerコンテナ群に対する各種管理機能を提供することで、アプリケーションコンテナを論理的な単位にグループ化し、管理性を向上させます。
FOG Project(フォグプロジェクト)とはオープンソースのコンピュータイメージングソリューションです。「OSイメージング(クローニング)機能」および「ネットワーク管理機能」を備えています。「Windows」「Mac OSX」「各種Linuxディストリビューション」などのデスクトップOSをサポートしています。
Juju(ジュジュ)とは、アプリケーションモデリングによるデプロイツールです。パブリック(プライベート)クラウドおよびローカルコンテナに対して効率的な展開/構成/拡張/操作を行えます。
Beats(ビーツ)とは、オープンソースデータ収集/転送プラットフォームです。Elastic社のプロダクト群で、サーバからあらゆる種類のオペレーショナルデータを収集して、Elasticsearch/Logstashなどに情報を転送します。
Xymon(シモン/サイモン)とは、ネットワーク監視ツールです。サーバ/アプリケーション/ネットワークなどについてグラフィカルインターフェースでの監視を行えます。
Apache Maven(アパッチ メイヴン)とは、Java用プロジェクト管理ツールです。不明瞭なソフトウェア開発プロジェクトをモデル化して、開発効率を高めます。
Draft(ドラフト)とは、「Docker」コンテナデプロイサポートツールです。Microsoftが提供しています。「Kubernetes」クラスタ上へのデプロイと継続的インテグレーション機能を提供します。
Consul(コンサル/コンスル)とは、クライアントサーバ型のクラスタ管理ツールです。同様ツール「Serf」よりも汎用的で、サービス検出(ヘルスチェック)用途などにも活用できます。
Packer(パッカー)とは、マシンイメージの自動生成/管理を行なうコマンドラインツールです。マシンイメージ作成に関するさまざまな問題を解決するためのサポートを行います。
Vagrant(ベイグラント)とは、仮想環境構築/共有ツールです。仮想化ツール(VirtualBoxなど)のフロントエンドラッパーとして機能し、数行のコマンドのみで簡単に仮想化環境を構築できます。
Itamae(イタマエ)とは、サーバ管理を自動化する構成管理ツールです。「Chef」ライクなRuby DSLで記述するツールで、必要最低限の機能のみを揃えており、非常にシンプルに使用できます。
CDIR Collector(シーディーアイアールコレクター)。セキュリティインシデント初動対応時の適切なデータ保全をサポートするツールです。調査対象端末汚染を最小限に抑えながら安全にデータを収集します。
Apache Ant(アパッチ アント)。ビルドツールです。複雑なコンパイル作業を自動化します。「XML記述」「Javaベースであるためプラットフォームに依存しない」などの特徴があります。
Pandora FMS(パンドラエフエムエス)。オープンソースの高機能統合監視ツールです。ネットワーク/コンピュータシステム/アプリケーション稼働状況などの監視を行います。
Hatohol(ハトホル)。システム全体を一元的に監視する統合運用管理ツールです。複数の運用管理ツール(Zabbix、Nagiosなど)のハブとして統合的に機能します。
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