2016年05月12日
オープンソース活用研究所 所長 寺田雄一
2016年2月23日に株式会社オージス総研東京本社にて「OSSライセンスをめぐる国内外の係争事例 ~OSSを適正利用するために~」というセミナーが開催されました。
本セミナーの第一部では「OSSライセンスをめぐる国内外の係争事例」という演題で虎ノ門南法律事務所 片山史英弁護士にご講演いただき、第二部では「オープンソースライセンス管理ソリューションのご提案」の演題で株式会社オージス総研 サービス事業本部 グローバルプロダクト部リーダーの吉井雅人様にお話いただきました。
講演では海外の係争事例の紹介が多かったこともあり、ここでは著者自身が「OSSライセンスをめぐる国内の係争事例」についてご紹介したいと思います。
GPL(GNU General Public License)は広く使われているオープンソースライセンスです。
ソースコードの公開を原則としており、誰でも自由に入手、使用、改変、再配布することができます。
また、GPLのプログラムを改変したり、独自に開発したプログラムの一部として組み込んだ場合などには、これらのプログラムにもGPLを適用してソースコードを公開しなければならないと定めています。
GPLの詳細については、Web上に情報がありますので、そちらを参照してください。
それでは具体的な係争事例について見ていきたいと思います。
(背景)
E社は、スキャナ・プリンタ用のLinux用のドライバで、多言語対応のためにgettextパッケージのソースコードの一部(libintl)を使用しており、2002年にこのドライバを無料で広く配布していました。
このソースコードのライセンスがGPLでしたが、同社はドライバのソースコードをGPLとはしておらず、ソースコードも公開されていませんでした。
(発覚の経緯)
ユーザーがソフトウェアを解析してGPL違反を発見、ネット上の掲示板に書き込むなどして発覚しました。
(対応)
同社はすぐにWebサイトで謝罪をしました。
また、ライセンスを明確にした上で使用するgettextパッケージをLGPL準拠のものに差し替え、非公開のコンポーネントについて、LGPL 2.1に明記されている目的に限ってリバースエンジニアリングを許可するよう使用許諾を変更しました。
このような対応が適切であった上に、同社のこれまでのOSSへの貢献もあって、OSSコミュニティから賞賛を浴びる結果になりました。
(背景)
2002年に発売されたT社のMP3プレーヤーですが、GPLが適用されているLinux Kernelなどが利用されていました。
(発覚の経緯)
製品を購入したユーザーが疑問に思いT社に連絡、そのやりとりをネット上の掲示板に書き込むなどして発覚しました。
(対応)
T社は、製品に含まれる改変したLinux Kernelを公開しました。
(背景)
2001年に販売されたS社のゲームソフトには、ソースコードの中にGPLが適用されている libarc が含まれていました。
(発覚の経緯)
2007年、ユーザーがソフトウェアを解析してGPL違反を発見し、S社などに連絡しました。
(対応)
同社はGPL違反の指摘について、「確認中」とのコメントのみで、明確な対応は無かったようです。
また同社は翌年同ゲームソフトの生産、販売を中止しています。
この対応については、疑問をもつユーザーも多かったようです。
やはり、電子機器への組込みや、ゲームなど販売されるソフトウェアへの組込みにおける事例が多いです。
まずはOSSライセンスについて、正しく理解することが必要です。
また、もちろん違反を起こさないことが重要ですが、万が一違反がおきてしまった場合は、適切かつ迅速な対応が重要です。
なお、3件とも訴訟には至っていません。
本セミナーの資料は以下のURLからダウンロードすることができます。
https://majisemi.com/e/c/ogisP-20160223
どうぞご参考ください。
1993年、株式会社野村総合研究所(NRI)入社。 インフラ系エンジニア、ITアーキテクトとして、証券会社基幹系システム、証券オンライントレードシステム、損保代理店システム、大手流通業基幹系システムなど、大規模システムのアーキテクチャ設計、基盤構築に従事。 2003年、NRI社内に、オープンソースの専門組織の設立を企画、10月に日本初となるオープンソース・ソリューションセンター設立。 2006年、社内ベンチャー制度にて、オープンソース・ワンストップサービス「OpenStandia(オープンスタンディア)」事業を開始。オープンソースを活用した、企業情報ポータル、情報分析、シングルサインオン、統合ID管理、ドキュメント管理、統合業務システム(ERP)などの事業を次々と展開。 オープンソースビジネス推進協議会(OBCI),OpenAMコンソーシアムなどの業界団体も設立。同会の理事、会長や、NPO法人日本ADempiereの理事などを歴任。 2013年、NRIを退社し、株式会社オープンソース活用研究所を設立。
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Vuls(バルス)とは脆弱性スキャンツールです。脆弱性データベースから脆弱性情報を取得して、「Linux(FreeBSD)系OS」「各種ミドルウェア」「各種フレームワーク」などに対する脆弱性存在を検査し、詳細情報をレポーティングします。サーバにインストールされているソフトウェアに対する脆弱性存在チェックに利用できます。
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OpenVAS(オープンバス)とは、セキュリティチェック用脆弱性スキャンツールです。包括的で強力な脆弱性スキャンを行うことで脆弱性管理をサポートします。対象ホストのOSやソフトウェアに既知の脆弱性が含まれているかどうかについて自動でチェックを行い、詳細レポートを作成します。
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Snort(スノート)はネットワーク型IDS(不正侵入検知システム)です。ネットワーク上を流れるパケットを解析して、不正パターンに合致するパケットを検知したら警告を発します。「パケットスニファ」や「パケットロガー」としても利用でき、豊富なアウトプットプラグインによる機能拡張が可能です。
OpenAM(オープンエーエム)とは、オープンソースの認証ソリューションです。「認証」「アクセス認可」「フェデレーション」などの高機能を備え、シングルサインオン機能を提供します。商用製品と同等の機能が実装されており、「アクセス制御の統合/強化」「セキュリティ対策」「個人情報漏洩防止強化」などのメリットがあります。
Keycloak(キークローク)とは、WebアプリケーションおよびRESTfulWebサービス用のシングルサインオン機能を提供するアクセス管理ソリューションです。「シングルサインオン認証フレームワーク」+「管理コンソール」でシングルサインオン環境を構築するための一通りの機能を提供します。
Shibboleth(シボレス)とは、シングルサインオン機能を提供するソリューションです。連合アイデンティティソリューションとして世界で広く展開されており、ユーザーを組織内外の両方のアプリケーションに接続します。
OpenVPN(オープンブイピーエヌ)とは、オープンソースのVPN(Virtual Private Network)構築ソフトウェアです。「堅牢なセキュリティと安定性」が特徴です。
WSO2 Identity Server(ダブルエスオーツー アイデンティティ サーバ)とは、シングルサインオンソリューションです。アプリケーション/API/クラウド/モバイル間で統合ID管理を行います。
LibreSSL(リブレ エスエスエル)とは、SSL/TLSプロトコルのオープンソース実装(通信用ソフトウェア)で、「OpenSSL」の派生改良版です。圧倒的シェアを持つが問題が多い「OpenSSL」を代替できるものとして期待されています。
OpenSSH(オープンエスエスエイチ)。ネットワーク経由通信を暗号化する「SSH」のオープンソース実装です。おもにUNIX/Linuxサーバに対するネットワーク経由でのリモートログインに使用します。
OpenSSL(オープンエスエスエル)。オープンソースSSL/TLS暗号化ライブラリです。世界中のWebサイトで圧倒的シェアを持っており、事実上の業界標準となっています。
Apache DS(アパッチディーエス)。オープンソースのLDAP(ディレクトリ)サーバです。「Apache Directory」プロジェクトで開発されています。
389 Directory Server(389ディレクトリサーバ)。オープンソースディレクトリサーバです。「Fedora Directory Server」の後継で、商用製品の流れを受けており、ユーザフレンドリーなGUIツールの充実などが特徴です。
OpenIDM(オープンアイディーエム)。高い柔軟性と拡張性を備え、エンタープライズ/クラウド/モバイル/ソーシャル/レガシーなど多様な環境において、ユーザアカウントのプロビジョニングとライフサイクルの一元管理を実現するID管理製品です。
OpenDJ(オープンディージェー)。OpenAMに内蔵されており、先進的なレプリケーションアーキテクチャや「REST API」を搭載したLDAP準拠の高機能オープンソースディレクトリサーバです。
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