2016年05月17日
オープンソース活用研究所 所長 寺田雄一
2016年2月19日、株式会社アクシオによる『主要シングルサインオン製品 徹底比較』セミナーが開催されました。
株式会社アクシオは、シングルサインオンなどの統合認証基盤システム分野を15年間取り扱っており、100社超の導入実績を保有しています。本セミナーでは、実際に構築を行った技術者の声を紹介するなど、5つのシングルサイオン製品の比較が行われました。
第2回目のレポートは、シングルサインオン製品の比較についてご紹介します。
講師がシングルサイオン構築の際によく遭遇するのは、「SSOの製品を導入すれば今ある業務アプリケーションは何もしなくてもシングルサイオンできるのですよね」と勘違いされることだそうです。提案の中で細かい話をしてゆくと提案が挫折してプロジェクトが頓挫してしまうこともあるそうです。
SSO製品が完全に保証するのは一つのIDとパスワードでログインする機能までです。つまり、統合されたログイン画面を提供するまでです。ログイン画面が用意されてIDとパスワードを入れて下さいという機能までです。
SSO製品とはあくまでも基盤を作るものであり、基盤に対してアプリケーションがどうやって連携するかについてはアプリケーション側で対応しなくてはなりません。またSSO製品で基盤を作るための考え方としては、基盤を作るだけの予算だけではなく、長期的にその基盤を活かしてゆくための予算をあらかじめ確保しておくことが必要だと講師は力説しました。
講師によると、SSO製品選定のポイントの第一は運用性です。導入はプロフェッショナルが行うので特に問題はないのですが、ユーザーに引き渡して運用するフェイズになると、運用性が低い製品の場合、なかなか基盤の展開が進まない状況になるそうです。
二番目のポイントはアプリケーションの移行性です。アプリケーションの移行が容易でないとSSOの基盤に連携できないといった状態になるそうです。
三番目のポイントはカスタマイズ性です。企業の独自要件を実現するために、カスタマイズのしやすさが製品を選ぶポイントになるそうです。
ところで、SSO製品選定のポイントとして機能という言葉はあまり使われません。その理由として講師は、SSOで使われている技術、例えばHTTPの技術、SAMLの技術、LDAP認証の技術などはグローバルに規格化されている技術で、ほとんどの製品が同じような機能を持っているからだと説明しています。よって製品間の機能面の差よりも作った後の使いやすさを重点的に見た方がよいそうです。
そしてSSO製品の比較です。今回比較対象になったのは
「IceWall」
「GlobalSign シングルサインオン」
「Novel Access Manager」
「OpenAM」
「Oracle Access Manager」
「OneLogin」
です。
比較対象製品の全てをインストールした事があるという講師によると、インストールや設定が圧倒的に簡単なのがIceWallです。用意しなければならないミドルウェアもApacheのHTTPサーバだけで、コマンドでインストールするだけで動くそうです。
IceWallで注意が必要なのは設定が全部テキストベースであることです。他の製品のようにWEBのGUIが用意されているわけではないため、GUIに慣れている場合若干戸惑わられるかもしれないそうです。
一方、インストールが難しいのがOracle Access Managerとのことです。講師によると、Oracle DBやWebLogicの知識がないとインストールが難しく、オラクルのコンサルタントの協力を得てもインストールに丸二日かかったそうです。
また、Oracle Access Managerは、Oracle DBとOracle WebLogicが必要になります。
Oracle Access Managerについて特筆すべき事として、Oracle Access ManagerはミドルウェアとしてOracle DBが必要ですが、これをユーザーデータベースとしては使うことができず、別途LDAP製品が必要になるとのことです。
次回では引き続き他のSSO製品について紹介していきます。
1993年、株式会社野村総合研究所(NRI)入社。 インフラ系エンジニア、ITアーキテクトとして、証券会社基幹系システム、証券オンライントレードシステム、損保代理店システム、大手流通業基幹系システムなど、大規模システムのアーキテクチャ設計、基盤構築に従事。 2003年、NRI社内に、オープンソースの専門組織の設立を企画、10月に日本初となるオープンソース・ソリューションセンター設立。 2006年、社内ベンチャー制度にて、オープンソース・ワンストップサービス「OpenStandia(オープンスタンディア)」事業を開始。オープンソースを活用した、企業情報ポータル、情報分析、シングルサインオン、統合ID管理、ドキュメント管理、統合業務システム(ERP)などの事業を次々と展開。 オープンソースビジネス推進協議会(OBCI),OpenAMコンソーシアムなどの業界団体も設立。同会の理事、会長や、NPO法人日本ADempiereの理事などを歴任。 2013年、NRIを退社し、株式会社オープンソース活用研究所を設立。
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FreeRADIUS(フリーラディウス)とは、オープンソースの高機能RADIUSサーバです。「RADIUS」はネットワーク上で「利用者認証」「権限付与」「利用状況記録」などを実施するための認証プロトコルであり、デファクトスタンダードとして広く使用されています。
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Vuls(バルス)とは脆弱性スキャンツールです。脆弱性データベースから脆弱性情報を取得して、「Linux(FreeBSD)系OS」「各種ミドルウェア」「各種フレームワーク」などに対する脆弱性存在を検査し、詳細情報をレポーティングします。サーバにインストールされているソフトウェアに対する脆弱性存在チェックに利用できます。
WireGuard(ワイヤーガード)とは、VPN(Virtual Private Network)ソリューションです。「Linuxカーネルツリーにマージ」「シンプル」「使いやすい」「数行のコードで簡単に実装」「ハイパフォーマンス」「学術研究をベースとして実装されている高いセキュリティ」などを特徴としています。
OpenLDAP(オープンエルダップ)とは、ディレクトリサービスを提供するオープンソースLDAPサーバです。サーバ間やシステム間で認証連携を行い、ユーザー情報データベースを統合管理することで、シングルサインオンを実現するための共通基盤となります。ディレクトリ情報の一元管理により、運用管理の作業負荷を大幅に削減し、セキュリティを強化できます。
OpenVAS(オープンバス)とは、セキュリティチェック用脆弱性スキャンツールです。包括的で強力な脆弱性スキャンを行うことで脆弱性管理をサポートします。対象ホストのOSやソフトウェアに既知の脆弱性が含まれているかどうかについて自動でチェックを行い、詳細レポートを作成します。
Metasploit Framework(メタスプロイトフレームワーク)とは、セキュリティ脆弱性テストフレームワークです。コンピュータセキュリティに関するオープンソースプロジェクトで、「情報収集」「脆弱性検出」「ペネトレーションテスト」などを主な守備範囲としています。
ClamAV(クラムエーブイ)とはアンチウイルスエンジンです。さまざまな「ウイルス」「マルウェア」「悪意のある脅威」などを検出します。「ファイルスキャン」「電子メールスキャン」「Webスキャン」などエンドポイントセキュリティを含むさまざまな状況で利用できます。
Snort(スノート)はネットワーク型IDS(不正侵入検知システム)です。ネットワーク上を流れるパケットを解析して、不正パターンに合致するパケットを検知したら警告を発します。「パケットスニファ」や「パケットロガー」としても利用でき、豊富なアウトプットプラグインによる機能拡張が可能です。
OpenAM(オープンエーエム)とは、オープンソースの認証ソリューションです。「認証」「アクセス認可」「フェデレーション」などの高機能を備え、シングルサインオン機能を提供します。商用製品と同等の機能が実装されており、「アクセス制御の統合/強化」「セキュリティ対策」「個人情報漏洩防止強化」などのメリットがあります。
Keycloak(キークローク)とは、WebアプリケーションおよびRESTfulWebサービス用のシングルサインオン機能を提供するアクセス管理ソリューションです。「シングルサインオン認証フレームワーク」+「管理コンソール」でシングルサインオン環境を構築するための一通りの機能を提供します。
Shibboleth(シボレス)とは、シングルサインオン機能を提供するソリューションです。連合アイデンティティソリューションとして世界で広く展開されており、ユーザーを組織内外の両方のアプリケーションに接続します。
OpenVPN(オープンブイピーエヌ)とは、オープンソースのVPN(Virtual Private Network)構築ソフトウェアです。「堅牢なセキュリティと安定性」が特徴です。
WSO2 Identity Server(ダブルエスオーツー アイデンティティ サーバ)とは、シングルサインオンソリューションです。アプリケーション/API/クラウド/モバイル間で統合ID管理を行います。
LibreSSL(リブレ エスエスエル)とは、SSL/TLSプロトコルのオープンソース実装(通信用ソフトウェア)で、「OpenSSL」の派生改良版です。圧倒的シェアを持つが問題が多い「OpenSSL」を代替できるものとして期待されています。
OpenSSH(オープンエスエスエイチ)。ネットワーク経由通信を暗号化する「SSH」のオープンソース実装です。おもにUNIX/Linuxサーバに対するネットワーク経由でのリモートログインに使用します。
OpenSSL(オープンエスエスエル)。オープンソースSSL/TLS暗号化ライブラリです。世界中のWebサイトで圧倒的シェアを持っており、事実上の業界標準となっています。
Apache DS(アパッチディーエス)。オープンソースのLDAP(ディレクトリ)サーバです。「Apache Directory」プロジェクトで開発されています。
389 Directory Server(389ディレクトリサーバ)。オープンソースディレクトリサーバです。「Fedora Directory Server」の後継で、商用製品の流れを受けており、ユーザフレンドリーなGUIツールの充実などが特徴です。
OpenIDM(オープンアイディーエム)。高い柔軟性と拡張性を備え、エンタープライズ/クラウド/モバイル/ソーシャル/レガシーなど多様な環境において、ユーザアカウントのプロビジョニングとライフサイクルの一元管理を実現するID管理製品です。
OpenDJ(オープンディージェー)。OpenAMに内蔵されており、先進的なレプリケーションアーキテクチャや「REST API」を搭載したLDAP準拠の高機能オープンソースディレクトリサーバです。
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