2014年03月27日
株式会社オージス総研 千野修平・諸橋純也
(寺田)
OpenAMはオープンソースということですが、従来の商用製品と比較してどのようなメリットがあるのでしょうか。
(諸橋)
一つはコストメリットです。商用製品はライセンス費用がユーザ数による課金になっているものがほとんどです。この場合、大企業などユーザ数が多いケースではライセンス費用が高額になります。オープンソースの場合、こういったライセンス費用を大幅に節約することが可能です。
また、導入する情報システム部門やSIerにとっては、仕様がオープンである、というメリットがあります。
(寺田)
「仕様がオープンである」ということは、具体的にはどのようなメリットがあるのでしょうか?
(千野)
事例をベースにご説明したほうがよいですね。
例えばあるお客様は、商用のシングルサインオン製品を使っていました。構築するまではよかったのですが、システムを運用していく中で、シングルサインオンの対象のアプリケーションには、どんどん修正が入っていきます。そして修正によってはシングルサインオン・システム側にも対応が必要になってきます。
ところが、シングルサインオン製品がブラックボックスになっているので、この対応が製品ベンダーしかできないのです。お客様は、仕方なく製品ベンダーに作業を依頼せざるを得ない。製品ベンダーはこれに対してお客様に高額な費用を要求してくるのです。
オープンソースであれば、このような状況を回避することが可能です。仕様がオープンであるため、製品ベンダーに作業を依頼せずとも、お客様やSIerが対応することができるのです。
(諸橋)
商用製品に対するOpenAMのメリットとして、最新技術や標準仕様への対応が早い、ということも挙げられます。OpenAMはSAML、OAuthなどの標準仕様に既に対応しています。これらを利用して、クラウドサービスとの認証連携が可能となります。商用製品では未対応であったり、対応していたとしてもオプション扱いで別途ライセンス費用がかかるものが多いです。
(寺田)
OpenAMを使うと、クラウドサービスとの連携は簡単にできるのでしょうか。
(諸橋)
GoogleApps、SalesforceCRMなどとの連携は比較的簡単です。しかし、Office365との連携の設定は、かなり複雑で難しいものとなります。Office365の認証を強化するために認証を委譲する設定を行うのですが、ADFS連携の設定や、Office365との信頼関係構築など、複雑な作業があります。
「ThemiStruct-WAM(テミストラクト-ワム)」では、Office365との接続のためのテンプレートを提供しますので、それを使っていただければ簡単に設定することができます。
(寺田)
Office365との連携について、導入事例はありますか?
(千野)
大学や、流通業などで実績があります。また、先日公開させていただいた事例で、電子部品専門商社の岡本無線電機様の事例があります。Office365と認証連携するだけでなく、セキュリティを強化するために会社から貸与されたスマートフォンに限ってシステムの利用を許可する「デバイス認証」を実現しました。また、テミストラクトを活用することによって、これらの作業をわずか2週間で完了することができました。
事例野詳細についてはこちらをご参照ください。
http://www.ogis-ri.co.jp/casestudy/1211509_7541.html
(寺田)
たった2週間で?それはすごいですね。テミストラクトのテンプレートのおかげ、ということですね。
いま、デバイス認証の話しがありましたが、OpenAMでは多要素認証やリスクベース認証に対応しているというお話しがありました。これらの利用シーンを少し具体的に教えていただけますでしょうか。
(諸橋)
例えばあるお客様では、社内からの利用の場合はID、パスワードだけで認証できます。これは会社で許可されたPCやネットワークからアクセスしているためです。
昨今、BYODの流れもあり、社外からインターネット経由で社内の情報システムにアクセスするケースも増えています。このお客様もそのようなニーズがあったのですが、社外からのアクセスに対してはID、パスワードだけで認証させるのは大変危険です。そのようなときに、多要素認証やリスクベース認証を使います。
このお客様では、社外からのアクセス時には、ID、パスワードに加えて、クライアント証明書を必須にしました。これによって、会社で事前に許可された端末からでしかアクセスできないようにしました。
(寺田)
なるほど。しかし、クライアント証明書を使う場合、証明書発行の運用がかなり大変だと聞いていますが。。。
(千野)
テミストラクトでは、「ThemiStruct-CM」というクライアント証明書の発行基盤も提供しています。これはEJBCAというオープンソースをベースにしています。このソリューションは、管理者画面が充実しており、証明書発行の運用をサポートします。
また、オージス総研では、大手エネルギー企業などに対して大量の証明書発行業務を提供しており、運用実績が豊富にあります。これらのノウハウを製品やマニュアルに反映することで、お客様やSIerに対して提供しています。これで実際の運用を行われるオペレータの作業をだいぶ軽減することができます。
(寺田)
自社で証明書を発行できれば、証明書の費用もだいぶ削減できますね。
証明書ではなく、ワンタイムパスワードを使うようなケースもありますか?
(諸橋)
はい、いくつかのお客様に導入しています。ワンタイムパスワードはスマートフォンなどで発行できる、ソフトウェアトークンを採用しています。スマートフォン側は、「Google Authenticator」を採用しています。これとOpenAMとの連携は当社で独自に開発致しました。
(寺田)
なるほど。ワンタイムパスワードへの対応や、証明書発行基盤の提供、Office365との連携といったあたりが、テミストラクトがOpenAMをベースに独自に拡張しているところなのですね。よくわかりました。
次回(第2回)では、テミストラクトについてより詳しく教えて下さい。
(第2回)OpenAMを拡張した、「ThemiStruct-WAM(テミストラクト-ワム)」
(第3回)OpenAMと連携する、発行枚数に依存せず定額な電子証明書とは?
(第4回)OpenAMを活用し、事前に許可したスマートフォンやタブレットにのみ、アクセスを許可するには?
(第5回)OpenAMを活用した、BYODにおけるセキュリティ強化の手法は?
(第6回)OpenAMによる、Office 365の認証統合
(第7回)OpenAMを活用して、Office 365のセキュリティを強化するには?
株式会社オージス総研で、オープンソースを活用したIT基盤ソリューションであるThemiStruct(テミストラクト)の開発に従事。 サービス事業本部 テミストラクトソリューション部 プロフェッショナルサービス第二チーム 千野修平 サービス事業本部 テミストラクトソリューション部 プロフェッショナルサービス第一チーム 諸橋純也
2022年11月11日(金)16:00~17:00 『今、知っておくべきサイバー攻撃の実態 ~一番危険なセキュリティリスクは何なのか?~』 と題したウェビナーが開催されました。 皆様のご参加、誠にありがとうございました。 当日の資料とサマリー動画を以下から無料でご覧いただけます。 ご興味のある企業さま、ぜひご覧ください。
「OSV-Scanner」(OSVスキャナー)とは、Google製「脆弱性スキャナー」です。「プロジェクト依存関係リスト」と「既知脆弱性」を照合するための「OSVデータベースへのフロントエンド」を提供します。パッケージリストに対して詳細チェックを実施することで、パッチ適用の必要性情報を得られます。
FreeRADIUS(フリーラディウス)とは、オープンソースの高機能RADIUSサーバです。「RADIUS」はネットワーク上で「利用者認証」「権限付与」「利用状況記録」などを実施するための認証プロトコルであり、デファクトスタンダードとして広く使用されています。
Google Authenticator(グーグルオーセンティケーター)とは、Googleが開発している2段階認証(2要素認証)用トークンソフトウェアです。「SMSテキストメッセージ」「音声通話」「モバイルアプリ」などを使用して認証コードを送信/生成します。Googleサービスのみではなく、他社サービスの認証にも利用できます。
Vuls(バルス)とは脆弱性スキャンツールです。脆弱性データベースから脆弱性情報を取得して、「Linux(FreeBSD)系OS」「各種ミドルウェア」「各種フレームワーク」などに対する脆弱性存在を検査し、詳細情報をレポーティングします。サーバにインストールされているソフトウェアに対する脆弱性存在チェックに利用できます。
WireGuard(ワイヤーガード)とは、VPN(Virtual Private Network)ソリューションです。「Linuxカーネルツリーにマージ」「シンプル」「使いやすい」「数行のコードで簡単に実装」「ハイパフォーマンス」「学術研究をベースとして実装されている高いセキュリティ」などを特徴としています。
OpenLDAP(オープンエルダップ)とは、ディレクトリサービスを提供するオープンソースLDAPサーバです。サーバ間やシステム間で認証連携を行い、ユーザー情報データベースを統合管理することで、シングルサインオンを実現するための共通基盤となります。ディレクトリ情報の一元管理により、運用管理の作業負荷を大幅に削減し、セキュリティを強化できます。
OpenVAS(オープンバス)とは、セキュリティチェック用脆弱性スキャンツールです。包括的で強力な脆弱性スキャンを行うことで脆弱性管理をサポートします。対象ホストのOSやソフトウェアに既知の脆弱性が含まれているかどうかについて自動でチェックを行い、詳細レポートを作成します。
Metasploit Framework(メタスプロイトフレームワーク)とは、セキュリティ脆弱性テストフレームワークです。コンピュータセキュリティに関するオープンソースプロジェクトで、「情報収集」「脆弱性検出」「ペネトレーションテスト」などを主な守備範囲としています。
ClamAV(クラムエーブイ)とはアンチウイルスエンジンです。さまざまな「ウイルス」「マルウェア」「悪意のある脅威」などを検出します。「ファイルスキャン」「電子メールスキャン」「Webスキャン」などエンドポイントセキュリティを含むさまざまな状況で利用できます。
Snort(スノート)はネットワーク型IDS(不正侵入検知システム)です。ネットワーク上を流れるパケットを解析して、不正パターンに合致するパケットを検知したら警告を発します。「パケットスニファ」や「パケットロガー」としても利用でき、豊富なアウトプットプラグインによる機能拡張が可能です。
OpenAM(オープンエーエム)とは、オープンソースの認証ソリューションです。「認証」「アクセス認可」「フェデレーション」などの高機能を備え、シングルサインオン機能を提供します。商用製品と同等の機能が実装されており、「アクセス制御の統合/強化」「セキュリティ対策」「個人情報漏洩防止強化」などのメリットがあります。
Keycloak(キークローク)とは、WebアプリケーションおよびRESTfulWebサービス用のシングルサインオン機能を提供するアクセス管理ソリューションです。「シングルサインオン認証フレームワーク」+「管理コンソール」でシングルサインオン環境を構築するための一通りの機能を提供します。
Shibboleth(シボレス)とは、シングルサインオン機能を提供するソリューションです。連合アイデンティティソリューションとして世界で広く展開されており、ユーザーを組織内外の両方のアプリケーションに接続します。
OpenVPN(オープンブイピーエヌ)とは、オープンソースのVPN(Virtual Private Network)構築ソフトウェアです。「堅牢なセキュリティと安定性」が特徴です。
WSO2 Identity Server(ダブルエスオーツー アイデンティティ サーバ)とは、シングルサインオンソリューションです。アプリケーション/API/クラウド/モバイル間で統合ID管理を行います。
LibreSSL(リブレ エスエスエル)とは、SSL/TLSプロトコルのオープンソース実装(通信用ソフトウェア)で、「OpenSSL」の派生改良版です。圧倒的シェアを持つが問題が多い「OpenSSL」を代替できるものとして期待されています。
OpenSSH(オープンエスエスエイチ)。ネットワーク経由通信を暗号化する「SSH」のオープンソース実装です。おもにUNIX/Linuxサーバに対するネットワーク経由でのリモートログインに使用します。
OpenSSL(オープンエスエスエル)。オープンソースSSL/TLS暗号化ライブラリです。世界中のWebサイトで圧倒的シェアを持っており、事実上の業界標準となっています。
Apache DS(アパッチディーエス)。オープンソースのLDAP(ディレクトリ)サーバです。「Apache Directory」プロジェクトで開発されています。
389 Directory Server(389ディレクトリサーバ)。オープンソースディレクトリサーバです。「Fedora Directory Server」の後継で、商用製品の流れを受けており、ユーザフレンドリーなGUIツールの充実などが特徴です。
OpenIDM(オープンアイディーエム)。高い柔軟性と拡張性を備え、エンタープライズ/クラウド/モバイル/ソーシャル/レガシーなど多様な環境において、ユーザアカウントのプロビジョニングとライフサイクルの一元管理を実現するID管理製品です。
OpenDJ(オープンディージェー)。OpenAMに内蔵されており、先進的なレプリケーションアーキテクチャや「REST API」を搭載したLDAP準拠の高機能オープンソースディレクトリサーバです。
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