オープンソースムーブメントが創りだした新たなビジネスモデル | 第一線で活躍するオープンソースエキスパートが綴るスペシャルコラム。

オープンソースムーブメントが創りだした新たなビジネスモデル

「オープンソースムーブメントが創り出した新たなビジネスモデル」への理解において差があった。何がアップルとサムスンをここまで強くしたのか・・・。スマートフォンの世界に於いて圧倒的な強みを持つアップルとサムスン。部品の輸出のみと言っても過言ではない日本企業が劣勢になった理由とは何かを分析。

[2013年06月20日 ]
特定非営利活動法人エルピーアイジャパン
理事長 成井 弦

今年(2013年)の4月4日の日経新聞は日本の家電輸出が不調でスマホを含む携帯電話の貿易赤字が約1兆円と報道しました。そして翌日の日経新聞にはサムスンはスマートフォン売上の好調により連結営業利益が7,400億円、昨年比53%増となったとの記事が掲載されました。

スマートフォンの世界に於いてアップルとサムスンが圧倒的な強みを持ち、日本企業は部品の輸出のみと言っても過言ではないと思います。それでは何がアップルとサムスンをここまで強くしたのか、別の言い方をすれば日本企業が劣勢になった理由は何かを分析することが重要だと思います。私は「オープンソースムーブメントが創り出した新たなビジネスモデル」への理解において差があったと思います。

「ソフトパワー」

オープンソースムーブメントが創り出した新たなビジネスモデルの一つは指揮権を持たずまた金を払わずして組織を動かすことが出来る「ソフトパワー」を駆使するビジネスモデルだと思います。従来の組織運営は指揮権を持ち金銭的な対価を払うことにより組織を動かすハードパワーが主体でした。
しかし、Linuxの開発責任者であるLinus Torvalds氏やRubyのまつもとひろゆき氏はソフト開発者に対し、指揮権を持たずまた金銭的な対価を払わずしてソフト開発を進める強力な「ソフトパワー」を有しています。

アップルのSteve Jobs氏はiPhoneを市場に投入後、半年近くの間で30万ものアプリの開発に成功します。現在はiPad向けのアプリも含めると80万近くのiアプリがあると言われています。
この偉業をSteve Jobs氏はアプリ開発者に対し指揮権を持たずまた金銭的な対価を払わずに行うことに成功しました。またiTunesUと呼ばれる無料のサービスでは、米国の主だった大学の数万ものコースを無料で聴講できます。これも大学の教授に対しJobs氏が指揮権を持たず金銭的な対価を払わずして実現したサービスです。
このように従来とは全く違ったソフトパワーでiPhone及びiPadのアプリ開発と配信をグローバルレベルで行うビジネスモデルに対して日本企業はお手上げの状況だと思います。

アップルの成功を見て、日本企業がアップル同様にスマートフォンのSDKを無料でアプリ開発者に配信しても開発者が増えないのは「ソフトパワー力」の違いから来るのだと思います。
またアップルのiOSはクローズドソースに分類されるOSですがiPhoneに使用されているソフトのライセンスに関する記述を見ると多くのOSSが使用されていることが判ります。
そして、iPhoneに搭載されているSafariの中核であるWebkitはアップルが提供したOSSです。iOSの中核と言われるDarwinもOSSです。
このようにアップルはiOSやSafariの改善を、「ソフトパワー」を駆使して外部の技術者を利用する戦略を取っています。

アップルの強みは「オープンソースムーブメントが創り出した新たなビジネスモデル」の一つである、「ソフトパワー」を機軸にしたビジネスモデルで圧倒的な優位性を獲得したと思います。

次のページへ続く

【次ページ】「貢献の競争」と「差別化のみが生きる道」

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著者プロフィール

特定非営利活動法人エルピーアイジャパン
理事長 成井 弦

米国DEC副社長、日本DEC取締役、日本SGI代表取締役副社長などを経て2000年にLPI-Japanを設立、理事長就任、現在に至る。

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