2016年05月19日
オープンソース活用研究所 所長 寺田雄一
2016年2月19日、株式会社アクシオによる『主要シングルサインオン製品 徹底比較』セミナーが開催されました。
株式会社アクシオは、シングルサインオンなどの統合認証基盤システム分野を15年間取り扱っており、100社超の導入実績を保有しています。本セミナーでは、実際に構築を行った技術者の声を紹介するなど、5つのシングルサイオン製品の比較が行われました。
第3回目のレポートは、引き続きシングルサインオン製品の比較についてご紹介します。
アプリの移行性という意味ではリバースプロキシ型製品であるIceWallとNovel Access Managerが完全に得意とする分野だそうです。
また両者にはコンテンツ書き換え機能があり、WEBサーバから返ってきたHTMLのBody部分を書き換える事が可能です。これを使う事でリンク先のURLを変えたり消したり出来る機能です。既存アプリケーションをSSOに移行させてゆく時に非常に強力なツールとなるそうです。
一方で、このような自動ログインの機能やコンテンツの書き換え機能を縦横無尽に使いこなすことが果たしてSSOの基盤としてあるべき姿なのかについては疑問を感じていると講師は述べています。
次にカスタマイズ性です。講師もSSOのログイン画面を変えてほしい、会社のロゴを入れてほしいといった依頼をよく受けるそうですが、ログイン画面のカスタマイズのやりやすさではIceWallが圧倒的に簡単との事です。IceWallはHTMLで提供されているためHTMLの簡単な知識があればいくらでもログイン画面をカスタマイズすることが出来るそうです。
他のアプリケーションはJSPなどで書かれており、カスタマイズが出来る事は出来るのですが、色々と制約があり思ったほどは自由にできないそうです。
Oracle Access Managerは、そもそもWebLogic上に展開するvarファイルとして提供されているので、ログイン画面の実体がない。実体がないのでカスタマイズが出来ず、ログイン画面は外で作って下さいということになるそうです。
以下、各製品の総合的評価を紹介していきます。
OracleはOracle DBやOracle WebLogicなどの料金も必要になるためトータルではコストは高くなります。ただ、サポートはオールインワンでミドルウェアも含めた総合的なサポートが受けられ、またサポートは多言語対応などグローバルに対応しているのが強みです。
OpenAMはサブスクリプション形式なので、オープンソースですが五年トータルで見るとコストは相応に高くなります。ミュニティ版を使えばコストはかからりませんが、サポートが必要な場合は各社のポリシーに従った費用が必要になります。またOpenAMはユーザーにもベンダーにもノウハウが乏しいのが懸念点です。
IceWallは当社が今後主要に取り扱って行く予定の製品です。しっかりした日本語ドキュメントが用意されています。またIceWallはコンテンツ変換が得意ですが、使いすぎてしまうと基盤としての意味が成り立たなくなってしまうので注意が必要です。
Novel Access Managerはインストールが意外と簡単で、必要なものが全部一回のインストールで導入可能です。しかし設定が難しく、ドキュメントは全部英語なので英語に弱い人は注意が必要です。
次に、講師はSAMLによるSSOについてお話されました。SAMLは2000年代前半から出ている古い技術ですが、実際に使われ始めたのは最近です。Google Apps が世に出てきてクラウドのアプリケーションとフェデレーション(認証連携)しなければならなくなった事が普及のトリガーだったとのことです。
一方で社内のアプリケーションのシングルサインオンには、SAMLはほとんど使われていません。SAMLの場合はXMLの形式でデータが渡されてXMLの中からユーザー情報を取り出す必要があり、そのノウハウが今日までに広く共有されなかったことが理由であるとのことです。
また、SAMLの場合はサービスプロバイダ単位でアクセス制御を行うため細かいアクセス制御の要望には応えられません。これもSAMLが社内であまり使われてこなかった理由ではないかと考えている、とのことです。
最後に講師はサポートが終了することになったRSA Access Managerを置き換えるなら、という話をしました。その場合はIceWallがお勧めとのことです。
SSOはあくまでも基盤であり、アプリケーションを基盤に移してゆくという事を全社的に行う必要があります。そのための目的意識と予算をあらかじめ用意しておくことが重要です。また、各社製品のそれぞれの特徴を理解し、自社にとって最適な製品を選ぶことが大切とのことです。
1993年、株式会社野村総合研究所(NRI)入社。 インフラ系エンジニア、ITアーキテクトとして、証券会社基幹系システム、証券オンライントレードシステム、損保代理店システム、大手流通業基幹系システムなど、大規模システムのアーキテクチャ設計、基盤構築に従事。 2003年、NRI社内に、オープンソースの専門組織の設立を企画、10月に日本初となるオープンソース・ソリューションセンター設立。 2006年、社内ベンチャー制度にて、オープンソース・ワンストップサービス「OpenStandia(オープンスタンディア)」事業を開始。オープンソースを活用した、企業情報ポータル、情報分析、シングルサインオン、統合ID管理、ドキュメント管理、統合業務システム(ERP)などの事業を次々と展開。 オープンソースビジネス推進協議会(OBCI),OpenAMコンソーシアムなどの業界団体も設立。同会の理事、会長や、NPO法人日本ADempiereの理事などを歴任。 2013年、NRIを退社し、株式会社オープンソース活用研究所を設立。
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「OSV-Scanner」(OSVスキャナー)とは、Google製「脆弱性スキャナー」です。「プロジェクト依存関係リスト」と「既知脆弱性」を照合するための「OSVデータベースへのフロントエンド」を提供します。パッケージリストに対して詳細チェックを実施することで、パッチ適用の必要性情報を得られます。
FreeRADIUS(フリーラディウス)とは、オープンソースの高機能RADIUSサーバです。「RADIUS」はネットワーク上で「利用者認証」「権限付与」「利用状況記録」などを実施するための認証プロトコルであり、デファクトスタンダードとして広く使用されています。
Google Authenticator(グーグルオーセンティケーター)とは、Googleが開発している2段階認証(2要素認証)用トークンソフトウェアです。「SMSテキストメッセージ」「音声通話」「モバイルアプリ」などを使用して認証コードを送信/生成します。Googleサービスのみではなく、他社サービスの認証にも利用できます。
Vuls(バルス)とは脆弱性スキャンツールです。脆弱性データベースから脆弱性情報を取得して、「Linux(FreeBSD)系OS」「各種ミドルウェア」「各種フレームワーク」などに対する脆弱性存在を検査し、詳細情報をレポーティングします。サーバにインストールされているソフトウェアに対する脆弱性存在チェックに利用できます。
WireGuard(ワイヤーガード)とは、VPN(Virtual Private Network)ソリューションです。「Linuxカーネルツリーにマージ」「シンプル」「使いやすい」「数行のコードで簡単に実装」「ハイパフォーマンス」「学術研究をベースとして実装されている高いセキュリティ」などを特徴としています。
OpenLDAP(オープンエルダップ)とは、ディレクトリサービスを提供するオープンソースLDAPサーバです。サーバ間やシステム間で認証連携を行い、ユーザー情報データベースを統合管理することで、シングルサインオンを実現するための共通基盤となります。ディレクトリ情報の一元管理により、運用管理の作業負荷を大幅に削減し、セキュリティを強化できます。
OpenVAS(オープンバス)とは、セキュリティチェック用脆弱性スキャンツールです。包括的で強力な脆弱性スキャンを行うことで脆弱性管理をサポートします。対象ホストのOSやソフトウェアに既知の脆弱性が含まれているかどうかについて自動でチェックを行い、詳細レポートを作成します。
Metasploit Framework(メタスプロイトフレームワーク)とは、セキュリティ脆弱性テストフレームワークです。コンピュータセキュリティに関するオープンソースプロジェクトで、「情報収集」「脆弱性検出」「ペネトレーションテスト」などを主な守備範囲としています。
ClamAV(クラムエーブイ)とはアンチウイルスエンジンです。さまざまな「ウイルス」「マルウェア」「悪意のある脅威」などを検出します。「ファイルスキャン」「電子メールスキャン」「Webスキャン」などエンドポイントセキュリティを含むさまざまな状況で利用できます。
Snort(スノート)はネットワーク型IDS(不正侵入検知システム)です。ネットワーク上を流れるパケットを解析して、不正パターンに合致するパケットを検知したら警告を発します。「パケットスニファ」や「パケットロガー」としても利用でき、豊富なアウトプットプラグインによる機能拡張が可能です。
OpenAM(オープンエーエム)とは、オープンソースの認証ソリューションです。「認証」「アクセス認可」「フェデレーション」などの高機能を備え、シングルサインオン機能を提供します。商用製品と同等の機能が実装されており、「アクセス制御の統合/強化」「セキュリティ対策」「個人情報漏洩防止強化」などのメリットがあります。
Keycloak(キークローク)とは、WebアプリケーションおよびRESTfulWebサービス用のシングルサインオン機能を提供するアクセス管理ソリューションです。「シングルサインオン認証フレームワーク」+「管理コンソール」でシングルサインオン環境を構築するための一通りの機能を提供します。
Shibboleth(シボレス)とは、シングルサインオン機能を提供するソリューションです。連合アイデンティティソリューションとして世界で広く展開されており、ユーザーを組織内外の両方のアプリケーションに接続します。
OpenVPN(オープンブイピーエヌ)とは、オープンソースのVPN(Virtual Private Network)構築ソフトウェアです。「堅牢なセキュリティと安定性」が特徴です。
WSO2 Identity Server(ダブルエスオーツー アイデンティティ サーバ)とは、シングルサインオンソリューションです。アプリケーション/API/クラウド/モバイル間で統合ID管理を行います。
LibreSSL(リブレ エスエスエル)とは、SSL/TLSプロトコルのオープンソース実装(通信用ソフトウェア)で、「OpenSSL」の派生改良版です。圧倒的シェアを持つが問題が多い「OpenSSL」を代替できるものとして期待されています。
OpenSSH(オープンエスエスエイチ)。ネットワーク経由通信を暗号化する「SSH」のオープンソース実装です。おもにUNIX/Linuxサーバに対するネットワーク経由でのリモートログインに使用します。
OpenSSL(オープンエスエスエル)。オープンソースSSL/TLS暗号化ライブラリです。世界中のWebサイトで圧倒的シェアを持っており、事実上の業界標準となっています。
Apache DS(アパッチディーエス)。オープンソースのLDAP(ディレクトリ)サーバです。「Apache Directory」プロジェクトで開発されています。
389 Directory Server(389ディレクトリサーバ)。オープンソースディレクトリサーバです。「Fedora Directory Server」の後継で、商用製品の流れを受けており、ユーザフレンドリーなGUIツールの充実などが特徴です。
OpenIDM(オープンアイディーエム)。高い柔軟性と拡張性を備え、エンタープライズ/クラウド/モバイル/ソーシャル/レガシーなど多様な環境において、ユーザアカウントのプロビジョニングとライフサイクルの一元管理を実現するID管理製品です。
OpenDJ(オープンディージェー)。OpenAMに内蔵されており、先進的なレプリケーションアーキテクチャや「REST API」を搭載したLDAP準拠の高機能オープンソースディレクトリサーバです。
OSS×Cloud ACCESS RANKING