クラウド時代におけるシステム運用の課題と対策 勉強会（3回目）

こんにちは！TIS株式会社 OSS推進室の倉持です。

2015年9月14日、TIS株式会社 セミナールームにて、『クラウドオーケストレーションと構築・運用の「アジャイル化」～クラウド時代におけるシステム運用の課題と対策 勉強会～』を開催致しました。

本稿では、勉強会での講演の中から、TIS株式会社 IT基盤技術本部 OSS推進室長 溝口 則行による『すぐ取り組むべき「標準化」、「自動化」と、OSSの活用　〜 OSS活用第2世代から第3世代へ 〜』の内容を、ダイジェストでご紹介致します。

なお本稿は、TIS株式会社 溝口の講演内容をベースに、倉持監修のもと、オープンソース活用研究所にて作成、編集しました。

講演資料は公開しておりますので、こちらもぜひご参考下さい。

『クラウド時代のOSS』が進むべき方向

私たちは昨年に「クラウド時代のOSS活用調査」という経済産業省の調査事業に取り組みました。以前は、企業のOSSの活用目的はコストダウンが目立ち、守りのITILという考えが中心でした。

しかしながら、現在はOpenStackや、その他のIoT関連ソフトウェア分野では商用ソフトへの置き換えが可能であり、新しい価値を提供するOSSも多く出てきています。もう一歩、踏み込みOSSを盛り上げていくと、OSSユーザや関係者にとって新しい価値を提供する夢のある将来像を描けるのではないかと考えています。

これから向かう方向性「守りから攻めのIT経営」

「クラウド」「ビッグデータ」「モバイル」「ソーシャル」といった第三のプラットフォームと言われる先端領域では、最初からOSSで登場し、そのOSSを活用しユーザが新しい価値（利益）の創出をはじめていく「OSSファースト」が登場し始めています。多くのユーザが、これらの領域に目が向かっていくことで、「攻めのIT経営」（経済産業省より）に進んでいくだろうと希望を持っています。

また、先端領域ではない「OS」「RDB」などの定番領域は、コストダウンが中心となり粛々と進めていくものですが、こちらの利用促進も有益であり従来価値観の中で進んでいくだろうと期待しています。

OSS第三世代

既存の商用ソフトウェアと遜色なく置き換え可能なOSSの活用が「第二世代」であれば、「第三世代」とは、最初からOSSとして登場し、そのOSSをユーザが自ら活用し、価値（利益）を生み出しはじめること＝クラウド時代のOSS活用と言えるのではないでしょうか。

OSS嫌いではなく慎重な日本

「クラウド時代のOSS活用調査」（経済産業省の調査事業）から面白い事例をご紹介します。

「利用されるOSSの推移（Webサーバの例）」グラフから、OSSのWebサーバである「Apache」と、軽量で注目されている「NginX（エンジンエックス）」の利用推移を見てみましょう。

圧倒的に「Apache」が強い中、「NginX（エンジンエックス）」が伸びつつあり徐々に変わってきている潮流が見てとれます。

次に、この中でもjpドメインで稼働しているものを見てみましょう。

jpドメインでは90.9%が「Apache」で稼働しており圧倒的です。「NginX（エンジンエックス）」は3.8%であることから、「NginX（エンジンエックス）」が伸びつつある世界の潮流に日本は付いていっていないことが分かります。

そして、Apacheが90.9%ということはOSSそのものを嫌っているのではなく、新しいOSSの「NginX（エンジンエックス）」には慎重な姿勢である傾向だと言えるのではないでしょうか。これらを良い・悪いではなく、しっかりと踏まえた上で慎重に提案していくことが必要と捉えています。

エンタープライズIT基盤のテンプレート化

OSS単体は成熟してきており、それらを組み合わせて企業情報システムの基幹業務系に進むことは可能であり、私たちも進んでいきたいと考えています。しかし、企業情報システムの全てがOSSにはならないでしょう。

個別のITサービスや特殊なパッケージソフトウェアが残りながらも、共通項になる部分ほどオープンなものに置き換わっていく流れが確実に来ていると思います。これらの共通項を標準化し、オープンソースによる標準ミドルウェアとしてテンプレート化していくことは有益と考えています。

企業情報システム標準化の範囲

企業情報システムには、アプリケーション、フレームワーク、ミドルウェア、ネットワークなど多くがあり、全てを一遍に標準化するのは大変です。各企業の核となる部分を中心とし、共通化、汎用化、標準化を進めることが得策です。

OSSを本番業務で使って大丈夫?

私たちは、本番業務を想定した非機能要件(性能、可用性)へ の適合性を独自の検証作業で確認し、検証ケースを積み上げ洗練した推奨構成をテンプレート化した「ISHIGAKI Template」を提供しています。

「ISHIGAKI Template」は、公共系、クレジットカード系のWebシステム、コンシューマ向けポータルサイトなど、多くのお客様が利用しています。テンプレート構築のコンサルティングサポートや保守サポートを提供しており、OSSを長期間にわたり本番業務で安心して利用いただくことができます。

これらのOSS利用については、企業情報システムとして十分に採用可能であり、本番業務で使って大丈夫という安全宣言を出して良いと考えていまます。

「ISHIGAKI Template」３つのエディション

ここで、「ISHIGAKI Template」の3つのエディションを紹介したいと思います。

Single Edition
「OSSベースのアプリケーション基盤を容易に構築するシングルサーバ構成」

HA (High-Availability) Edition
「本番サーバ障害時に長時間の業務停止を回避できるHAクラスタ構成」

Cluster Edition
「一台のサーバで処理しきれない大量業務処理を想定した構成」

次回は、OSSを活用した運用の自動化についてご紹介したいと思います。

（TIS株式会社 IT基盤技術本部 OSS推進室長 溝口 則行のプロフィール）
勤務先でのOSS推進グループのリーダをしつつ、会社を抜け出してOSS関連のコンソーシアムなどによく出没する。得意分野は懇親会。技術系ブログサイト「Tech-Sketch」では、同僚のタレントたちがOSSの最新情報を書いている中で、なぜかネットワークとか性能工学とか異色のネタを披露している。