米国ベイエリアレポート（第８回）Mozillaとオープンソースエコシステム

Google, Apple, Facebook等、IT業界を牽引するグローバルカンパニーが集積するシリコンバレー。それら先進企業においても、オープンソースソフトウェアの存在は不可欠なものとなっています。

ここではシリコンバレーにおけるIT、オープンソースの動向について、紹介させて頂きます。今回は、第9回目として、Mozillaコーポレーション (Mozilla Corporation) にてプロダクトマネージャをご担当されているアリ・スピバクさん(Ali Spivak)にお伺いした内容を以下ご紹介いたします。

アリ・スピバークさんのご紹介

(過去のご経歴をご紹介いただけますか。)

もちろん! 私はMozillaにて3年ほど、提供コンテンツの管理およびMDN (Mozilla Developer Network) というコミュニティ運営を担当しています。その前は、シスコ社 (Cisco Systems, Inc) にて、11年ほどCisco.comの運営を中心として担当し、それより前はいくつかのスタートアップにて勤務してきました。ソフトウェアの品質管理からキャリアをスタートした後、Webシステム開発を経験し、そして、プログラム / プロジェクト管理を担当するようになりました。MDNにおける私の担当は、MDNのWebサイトの執筆者及び開発者がより楽しく、生産的に作業ができるように支援することです。

(最近はどのようなことを中心に従事されているのですか？)

現在は、MDNがWeb開発者が欲するMozillaのテクノロジーに関する情報をうまくシェアすることを目指して、開発者およびテクニカルライターと共に、彼らの中には有給で作業いただいている人もボランタリーで作業している人もいますが、ともに、作業を取り組んでいます。ここでの作業には、JavaScriptや、HTML、CSSと言った分野のドキュメント改良、今年の夏にリリース予定であるECMAScript 6のリリース準備の他、提供コンテンツの多言語対応と言った作業も含みます。

私達はまた、スタッフおよびボランティアの共同で、Web開発初心者に向けのドキュメントである"Learn the Web" (https://developer.mozilla.org/en-US/Learn) を含む新たなサービスやコンテンツの立ち上げにも取り組んでいます。

Mozillaコミュニティの歴史

Mozillaコミュニティ

(Mozilla財団およびMozillaコーポレーションのミッションおよび歴史についてお伺いできますか。)

Mozillaは、Webに関するオープンネス、イノベーションおよび、Web利用の促進をミッションとする非営利組織です。私達は世界が必要とするインターネットの構築のため、製品を作り、コミュニティをサポートし、技術情報の提供、および環境整備に取り組むことをプリンシプル(基本原則) としています。

Mozillaプロジェクトは1998年に行われたNetscapeブラウザのソースコードリリース (http://web.archive.org/web/20021001071727/wp.netscape.com/newsref/pr/newsrelease558.html) に始まります。それはインターネット上の創造力に満ちた多くのプログラマと言う資産を活用し、ブラウザ市場に過去にないような革新を引き起こすことを意図したものでした。より詳細については、こちら (https://www.mozilla.org/en-US/about/history/details/) からご確認いただけます。

Firefoxが立ち上げられてから10年が立ち、テクノロジーおよびオープンソースもかなりの進化を遂げましたが、Mozillaはこの当初のミッションを大切にしています。

(Mozilla Firefoxと他のブラウザでの大きな違いは何が挙げられると思いますか。)

Firefoxは高速で、丹精にデザインされ、高いカスタマイズ性があります。ユーザーはFirefoxに加えた改良に対してすぐに反応します。他のブラウザはユーザを彼らのプラットフォームに囲い込もうとする傾向がありますが、私達はユーザーをより快適で、相互作用をもたらし、世界中からのアクセスを可能とし、新たな世代の言論の自由を尊重する、Webの世界へ導くことに尽力しています。

また、デスクトップ向けのFirefoxの他、Android対応版のFirefoxの普及にも目を向けています。Android版についてはGoogle Playから1億回以上のダウンロードが行われては、4ポイント以上の高い評価を維持しています。

(Mozillaプロジェクトには今何名くらいが参加しているのですか。)

プロジェクトには、今、世界で千人ほどのスタッフに加え、数千人のボランティアが参加しています。それらには、コンテンツの翻訳作業の他、デスクトップ向けFirefox、Firefox OS、Android対応版Firefoxへのコードの提供が挙げられます。

MDNにおいては、900名程のボランティアがおり、月に一回程度、編集作業に貢献される人から、頻繁に対応いただける方まで様々です。私はMDNを担当領域としていますが、最近はJavaScriptに関するコンテンツの翻訳および、用語集、初心者向けのチュートリアルの作成に主に取り組んでいます。

(コミュニティに対してはどのような貢献を期待されていますか。)

MDNのボランティアに期待することとしては、特定の技術領域に関する投稿、文面のテクニカルレビュー、サンプルコードの作成、デモンストレーション、および、英語以外の言語への翻訳といった作業が挙げられます。その他にも、イベントを企画したり、カンファレンスへの協力、プロジェクトの計画、実行のサポートをしてくれるコントリビューターもいます。

その他にも、Kumaと呼ばれ、NodeJSおよびカスタマイズされたDjangoによって実装されたMDNのWikiプラットフォームにコードを提供してくれるコントリビューターのグループもあります。それらのコードはGitHubにホストされています。

オープンソースとビジネス

Dev2Devサミットにおける講演の様子

(Mozillaにおける主な収益源はなんですか。)

Mozillaにおける収益源としては、寄付および、事業収益が挙げられます。寄付金としては、助成金の他、個人からの寄付が含まれます。事業収益としては、昨年に関しては、Yahoo、YndexおよびBaiduと言った会社から検索機能に関連するサービスの提供に伴うものが挙げられます。詳細については、Denelle Dixon-Thayerさんのブログ (https://blog.mozilla.org/press/2014/12/building-a-healthy-web-to-hand-to-future-generations/) から確認できます。

Mozillaの成功においては、ボランティアの存在が大きなカギを握っており、今後も同様だと思います。ボランティアなしにはFirefoxは今のような形で、社会にインパクトをもたらすことはできなかったでしょう。コミュニティの存在が私達の取り組みの強みとなっています。

(次の20年でソフトウェア開発の形はどのようになると思いますか。より多くのオープンソースプロジェクトが生まれると思いますか、それとも何か新しい形でのソフトウェア開発が広まると思いますか。)

20年前には、誰も今の在り方を想像できた人はいなかったのではないかと思います。言えることはモバイル分野は引き続き伸び続けると思いますが、モバイル向けのソフトウェア開発の在り方については、まだ模索中にあるように感じます。Mozillaは開発者のために、オープンスタンダードおよびWebへの自由なアクセスをこれからも尊重していきたいと考えています。

最後に

(次のステップとしてはどのようなことを計画されていますか。)

これからもWeb開発者向けによいコンテンツを提供し続けていきたいですね! 私達は、より多くのコンテンツ作成、初心者向けのレッスンの実施、ローカルコミュニティへの知識の伝承に、これからも取り組んでいきます。

(ソフトウェアエンジニアにお薦めの本はありますか。)

MDNは、Web開発者向けの最高のテクニカルリファレンスとなることを目指しています。なので、私からの推薦はMDNですね!

(本日はご協力ありがとうございました。)

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