2013年04月08日
株式会社オープンソース・ビジネスアプリケーションズ 萩原 秀明
iDempiere(アイデンピエレ)は、GPL(General Public License)のもと、無料で使用できるオープンソースのERPです。iDempiereは2012年11月1日にα(アルファー)版(※開発途中のものをテスト目的で配布する版)が公開され、2013年2月現在、β(ベータ)版(※正式版リリース直前段階の評価版)として開発が進められており、2013年の春から夏先に向けて正式版が公開される予定です。
オープンソースの活用領域は、Linuxに代表されるOS部分から、MySQLやPostgreSQLに代表されるミドルウェア部分に移り、現在は業務アプリケーション領域にまで拡大しています。そのオープンソースの業務アプリケーション領域におけるERP分野で現在デファクトスタンダードと言える存在なのはADempiere(アデンピエレ)というソフトですが、次世代のデファクトスタンダートとなる可能性が一番高いのがiDempiereです。
まだβ(ベータ)版のiDempiereに対して、なぜ次世代のオープンソースERPのデファクトスタンダードとなる可能性が一番高いと言い切れるのか、その理由はiDempiereの歴史と実装されている機能、今後の展開を知ると理解できます。
iDempiereの歴史は1999年に始まります。iDempiereには前身にあたるソフトが2つ存在し、1つが現在オープンソースERPのデファクトスタンダードとなっているADempiereで、もう1つがCompiere(コンピエール)というソフトです。1999年はCompiereがオープンソースのERPとして公開された年になります。
Compiereはソースコードの公開後、開発コミュニティーと、開発の中心人物であったヨルグ・ヤンケ (Jorg Janke)氏が設立したComPiere社(※社名を表すCompiereは"P"を大文字にするのが慣習)が中心になって開発が進められます。Compiereは2002年から4年間、SourceForge(※オープンソースのソフトウェア開発のためにデータの保管と各種サービスを提供しているサイト)のTOP10プロジェクトにランキングされ、2006年には100万ダウンロードを達成するなど、オープンソースのERPとして注目を集めます。しかし、2006年にComPiere社がベンチャーキャピタルから出資を受けると、Compiereは商業化を強く模索するようになります。このComPiere社の商業化の方針に異を唱えた開発コミュニティーのメンバーが2006年にCompiereから分離して、CompiereをもとにしてADempiereの開発を始めます。
商業化に舵を切ったCompiereは求心力を失い、ComPiere社は2010年6月にConsona社に買収され、そのConsona社は2012年8月に、CDC Software社と合併してAptean社となっています。ERPソフトとしてのCompiereは現在も存在していますが、オープンソースとして提供されているのは2009年に公開されたバージョン3.3までで、これ以降2013年2月現在の最新バージョン3.8に至るまでソースコードは公開されていません。今後も最新バージョンのソースコードが公開されるかどうかは不明であり、CompiereにはオープンソースのERPとしての発展は期待できない状況です。
Compiereの商業化後、注目を集めたのがADempiereです。ADempiereは、オープンソースとしての精神を大切にしながら開発が進められ、Compiereに代わってオープンソースERPのデファクトスタンダードになっていきます。
オープンソースとしての精神を大切にして開発が進められ、ある一定の成功を収めたとも評価できるADempiereですが、開発コミュニティーの内部はその開発方針により2分されて行きます。一方は業務アプリケーションとの性質を重んじなるべく不具合の無い状況でソースコードをコミットしようと考える開発グループと、一方はオープンソースとしての性格を利用し、不具合はソフトの利用者が発見し報告してくれれば良いとして、それほど品質の良くないソースコードもリポジトリにコミットしようとする開発グループです。
そして2011年頃、前者のグループに属する開発者の少数がADempiereを独自に開発しはじめ、OSGi(※プラグイン構造を実現するための仕様)の概念をプラスしたiDempiereに発展して行きます。今ではADempiereのトップコミッターの多くがiDempiereに移行して開発が行われており、iDempiereは実質的にADempiereの後継となるオープンソースのERPとなっています。
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コンサルタント兼エンジニアとして大手商用ERPの導入/開発に4年ほど、Compiereの導入/開発に3年半ほど携わる。業務面では会計分野が得意。
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Roundcube Webmail(ラウンドキューブウェブメール)とは、オープンソースWebメールソリューションです。「MIMEサポート」「アドレスブック」「フォルダ管理」「メッセージ検索」「スペルチェック」など、Eメールクライアントに期待される機能を提供します。
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Liferay(ライフレイ)とは、Webシステム開発用総合プラットフォームです。機能部品(ポートレット)を組み合わせて、企業ポータルサイト/コンテンツ管理システムなどを構築できます。オープンソースポータルで世界市場シェア1位の導入実績があります。
Moodle(ムードル)はオープンソースのeラーニングプラットフォームです。LMS(Learning Management System)としての強力な機能を備えており、煩雑な学習状況の管理や採点をサポートし、より高い水準でのeラーニングの提供を可能とします。
Evergreen(エバーグリーン)は、図書館向けのエンタープライズクラス統合管理システムです。図書館の規模や複雑さに関係なく対応できる拡張性を特徴としています。「図書館スタッフ用図書資料管理サポート機能」や「利用者用図書資料検索機能」などを提供します。
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※オープンソースグループウェア「Aipo」は、2018年3月31日で提供終了しています。Aipo(アイポ)とはオープンソースのグループウェア製品です。スケジュール管理機能やワークフロー機能などの一般的なグループウェアの基本機能を搭載しています。その他にも、メッセージ機能や、SNSとして使えるタイムライン表示機能なども搭載しています。
Ghost(ゴースト)とは、プロフェッショナルパブリッシングに対応できるCMSプラットフォームです。「プロ向けに焦点を絞った新しいコンテンツプラットフォームを作成する」というKickstarterキャンペーンが大成功を収めた後に設立された非営利基盤「Ghost」を中心として開発されています。
Canvas LMS(キャンバスLMS)とは、オープンソース学習管理システム(LMS:Learning Management System)です。学習教材配信管理や成績管理など、学習に必要な各種要素を統合して管理できます。世界中の多くの学校で採用されています。
Interchange(インターチェンジ)とは、Webベースの電子商取引用アプリケーションサーバです。「Webアプリケーションサーバ機能」「カタログ機能」「データベース機能」「Webサイト作成機能」「自動化機能」などを提供し、eコマースサイトを構築できます。
Pleasanter(プリザンター)とは、国産オープンソースのビジネスアプリケーションプラットフォームです。ノンプログラミングで簡単に統合業務アプリケーションを作成できます。「顧客管理」「営業支援」「プロジェクト管理」「問合せ管理」などの幅広い業務に活用でき、チームメンバー間のコラボレーションを向上できます。
Nextcloud(ネクストクラウド)とは、オンラインストレージ機能を提供するサーバソフトウェアです。自分自身がコントロールできる環境下にあるサーバにインストールして利用できます。「プライバシー」「セキュア」「柔軟性」などを特徴としています。
Odoo(オドゥー)とは、オープンソースのWebベースビジネスアプリケーションスイートです。必要となるさまざまなアプリを組み合わせてカスタマイズすることで、ビジネスにフィットするアプリケーションスイートにすることができます。世界中で3700万人を超えるユーザーによって利用されています。
Mattermost(マターモスト)とは、企業向けの高信頼メッセージングツールで、Slack風チャット型コミュニケーションツールとして利用できます。エンタープライズレベルで使用できるメッセージングプラットフォームとして、コンプライアンス対応を重視して設計されています。
Magento(マジェント)とは、世界トップクラスのオープンソースeコマース(電子商取引)プラットフォームです。「多言語対応」「多通貨対応」が可能な越境ECサイトを構築できます。Magentoには、越境ECサイトを構築し、ネットショップを運営するために必要十分な機能が一通り搭載されています。
Vtiger CRM(ブイタイガーシーアールエム)とは、オープンソースのCRM/SFAを中心とするビジネス管理スイートです。「営業管理」「マーケティング管理」「サポートサービス管理」「顧客管理」などの幅広い領域をカバーして企業の営業力を向上できます。
MosP(モスプ)とは、「勤怠管理」「人事管理」「給与計算」機能を提供するWebアプリケーションです。日本製であり日本の法令やビジネス慣習に的確に対応できるため日本企業が安心して利用できるプロダクトです。
LibreOffice(リブレオフィス)とは、「Microsoft Office」と同等の機能を持つ、オープンソース高機能オフィススイート製品です。一般的なLinuxディストリビューションのデフォルトオフィススイートになっており、世界で多くのユーザーが利用しています。
WordPress(ワードプレス)とは、コンテンツ管理システム(Contents Management System)です。「シンプルで直感的な操作性」「高いユーザビリティ」「Web標準設計準拠」「拡張性」などが評価され、CMS部門では世界シェアトップを誇ります。
Mastodon(マストドン)とは、Twitterライクなサーバ分散型SNSサービスです。「1企業によって中央集権的に管理されることがないSNSサービス」として大きな注目を集めています。
OnlyOffice(オンリーオフィス)とは、「オンラインオフィススイート機能」+「各種オンラインコラボレーション機能」を提供する多機能ポータルです。
OpenCms(オープンシーエムエス)とは、「使いやすい」「信頼性が高い」など特徴を持つプロフェッショナルユースに対応できるコンテツ管理システムです。
XOOPS Cube(ズープスキューブ)とは、コミュニティポータル構築に特化した国産のCMS(コンテンツマネジメントシステム)です。個人ホームページから本格的コミュニティサイトまで幅広いジャンルのWebサイトを手軽に構築できます。
OSSカレンダーはシンキングリード社が企業での利用を想定して開発されたスケジュール管理アプリケーションです。また、日本の企業が開発を行っているため日本での利用がしやすいのが特徴です。
baserCMS(ベーサーシーエムエス)。「日本人が日本人のために開発している」国産CMS(コンテンツマネージメントシステム)です。CakePHPで実装されており、主にコーポレートサイト向きに設計されています。
Concrete5(コンクリートファイブ)。ブラウザから直感的にサイトの運営管理が行えるCMSです。人気/シェアともに高まってきている注目のCMSです。
Movable Type Open Source(ムーバブルタイプオープンソース)。CMS製品です。静的出力の仕組みにより比較的安価なサーバで大量のアクセスに対応しやすい特徴があります。
Geeklog(ギークログ)。セキュアなオープンソースCMSです。一般的サイト/グループウェアサイト/高機能ポータルサイトなどを構築できます。日本語版が充実している点が特徴です。
F-RevoCRM(エフレボシーアールエム)は、高機能なオープンソースCRMアプリケーションとして世界中で活用されているvtigerCRMをベースに、日本の企業文化に合わせシンキングリード社が独自にカスタマイズを行ったフリー&オープンな高機能CRMアプリケーションです。
SugarCRM(シュガーシーアールエム)。オープンソースCRM(顧客関係管理)/SFA(営業管理)ソリューションです。顧客情報/営業案件情報などを管理し営業活動をサポートします。
iDempiere(アイデンピエレ)。OSGi、Buckminster、ZK Web UI6.0、Java7などの最新アーキテクチャを採用した、ADempiereの後継の高機能ERPパッケージ
Apache OpenOffice(アパッチオープンオフィス)。「Microsoft Office」と同等の機能を持つ、オープンソース高機能オフィススイート製品。
Joomla!(ジュームラ)。サイト構築や運営を、パワフルに、拡張的に、一元的に管理できる特徴を持つCMS(Content Management System、コンテンツ管理)ソリューションです。
OSS×Cloud ACCESS RANKING